Vol.7 ヴァル ダ ジョール グリオッティーヌ

プルー社(フランス)



野生のフルーツと純粋な水、この2つが世界の名品を生む

フランス北東部、ヴォージュ山脈とオート・ソーヌ県との境に位置するヴォージュ山地は、サクランボ栽培に最適な粗砂岩の地層であるため、昔から良質のサクランボを産する地として知られていました。この地は、フランボワーズ、コケモモなど、あらゆる種類の野生の果実がたわわに実るフルーツ王国でもありました。
その中心地であるフジュロールに、プルー社の創始者オーギュスト・プルー氏が蒸留所を設立したのは、1864年のことです。あまりにもデリケートなこれらのフルーツは、長距離の輸送には耐えられず、地元で加工する以外に手だてがないことが、彼がこの地を選んだ理由でした。また、ミネラル塩をほとんど含まない純粋な水が豊富に湧き出ることも、品質の高いお酒の製造には不可欠の要素でした。豊かなフルーツと純度の高い水という二大条件に恵まれた地で、彼はその事業をスタートさせることになります。
彼はブランドの立ち上げを望まずに品質評価の卸売りに限定することで、事業を大きく伸ばしていきます。当初、彼が製造していたのは蒸留酒 キルシュや香草リキュールアブサンなどでした。キルシュはパリの有力企業数社に供給し、ベルギーや南アフリカ、アルジェリアなどにも、取引先が広がっていきました。 そうした洋酒を礎に展覧会で数々の受賞をするなど、プルー社発展の基礎を築き上げていきます。

洋酒にこだわる品質本位のヴァル ダ ジョールブランド

プルー社の名声に大きく寄与したもう一つの商品が、オー・ド・ヴィ漬けチェリー”グリオッティーヌ”です。プルー蒸留所の当時のマネージング・ディレクターであるピエール・ボー氏の手によって生まれたグリオッティーヌは、誕生するやいなや、たちまちプルー社のスーパースターとなっていきます。
深い紅色に色づき、艶やかに実ったグリオット・チェリーは、果実の宝石ともいえる見事なもの。丁寧に収穫された後、果樹園の中ですぐに選別され、最高品質のものだけが厳選されます。蒸留所でオー・ド・ヴィを入れたタンクに漬けられた後、キルシュ、酒精、砂糖を合わせたライトシロップに漬け込まれます。これによって、グリオット・チェリーに独特の香味が生まれ、甘みがさらに引き立てられ、豊潤な香りが強調されることになるのです。特に、ラベルに銘記された「ヴァル ダ ジョール」は、プルー社の使う洋酒へのこだわりを示すブランドとなります。



画期的な種抜き技法を独自に開発

プルー社のグリオッティーヌの優れた点は、こうした品質面での強いこだわりだけではありません。世界の人々がグリオッティーヌを使いやすいように、独自に開発した機械で種を取り除くという画期的な取り組みを行ったのです。柔らかいチェリーの形を崩さずに種だけを一瞬で抜き取るその全自動機械のスピードはマジックの様。類まれな味に付加価値をもたらしたこの種抜きチェリー オー・ド・ヴィ漬けは、世界市場でまさにプルー社の独壇場といえます。
このグリオッティーヌをさらに発展させることで誕生したのが、グリオッティーヌ ナチュレル コンサントレです。グリオッティーヌの果肉と果汁を真空状態で加熱・循環させると、水分のみが蒸発し、濃縮された超濃度果汁が作り出されます。
着色料や保存料、香料などをいっさい使用せず、ノンアルコールに仕上げられたこの製品は、カシス、フランボワーズなどのベリー系ピューレ、シャーベットの風味に核と個性を与えます。デザートソース、生クリーム、ムース、焼菓子などに不可欠の素材といえます。

年度により起こりうる豊作・不作にも慎重に対応

現在、プルー社では、15ヘクタールの敷地内に合計約50万ヘクトリットルものタンクを持ち、つねに約7万ヘクトリットルの純アルコールを保存するという規模を誇っています。オー・ド・ヴィにとって決定的な要素となる蒸留設備は、40トンのポットスチル2基により一定の水準を得られるようなシステムが整えられており、そこから製造されるお酒は、つねに高品質を保てるように最大限の配慮が成されています。
また、自然の恵みに溢れる土地とはいえ、年度によって起こりうる果実の豊作・不作に対処するための設備も充実しているのが、プルー社の自慢。こうした細心の配慮により、つねに品質の一定したグリオッティーヌが世界に配送されるようになっているのです。
収穫された果実の全量を、その果実にとっての最良の条件下で蒸留あるいは漬け込みができるような最大の許容量を持つことは、とりもなおさず、プルー社の名声をさらに向上させる大きな力となっています。

ルノートル、タイユバンなど、超一流で絶賛される味わい

現在、プルー社のグリオッティーヌは、ネスレなどの大企業はもちろんのこと、ルノートル、アラン・シャペル、タイユバンなど世界に名だたるレストランや菓子店で使用されており、お菓子や料理に欠かせない存在となっています。
チョコレート、タルト、アイスクリームなどのオーナメントとして、あるいはムースやクリームのフィリングとして、グリオッティーヌの使い道は多種多様。粒選りの一級品チェリーのみを使うというプルー社の厳しい姿勢は、世界中の超一流パティシエや料理シェフの認めるところとなっています。
まさに、料理とお菓子を知り抜いたプロ中のプロが絶賛するヴァル ダ ジョール グリオッティーヌ。今年も、フルーツ王国ヴォージュから、豊潤な風味が世界に届けられることでしょう。

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