Vol.4 ヴェアポーテン アドヴォカート

ヴェアポーテン社(ドイツ)



アマゾンからヨーロッパへ伝わった珍しい黄色いお酒

数百年前、燃えるような褐色の肌をした先住アメリカ人たちが愛飲していたと伝えられる黄色のお酒。彼らはアマゾンの周辺に住み、この地でとれるフルーツから、夢のような色をしたお酒を作っていたといわれています。
このお酒の原料は、熟すと黄色くなるフルーツ、アヴォカドでした。森のバターとも呼ばれる濃厚な風味が、蜂蜜やスパイスとともにアルコールに溶け込み、おそらくえもいわれぬ風味のお酒であったことでしょう。
南アメリカは、やがてヨーロッパの国々からやってきた入植者たちによって開拓されていきますが、最初にこの黄色のお酒を発見したのはポルトガル人だといわれています。インド、さらにはインドネシアにまで、このお酒は広まっていくのですが、珍しいおみやげとしてヨーロッパに持ち帰ったのはオランダの入植者でした。

アヴォカドの代わりに卵黄を使って幻のお酒を実現

しかし、ここで、はたと困った問題が生じます。飲んだ人々は、いままでに味わったことのない濃厚なおいしさの虜になってしまうのですが、同じものを作りたくとも、ヨーロッパ北部では熱帯フルーツのアヴォカドは栽培できません。このまま忘れ去られても不思議ではなかったのですが、なんとか同じような風味のお酒を作り出したいと情熱を注ぐ人々のおかげで、新たなお酒が誕生したのです。それがアドヴォカート エッグ・リキュールです。
エッグ・リキュールという名からもわかるように、アヴォカドに代わる原料として選ばれたのは卵黄でした。濃厚で黄色い卵黄をブランデーや砂糖、その他の材料とブレンドすると、色はもちろん、味や香りまで、幻の南米のお酒とそっくりになったのです。
このお酒には、アドヴォカート、つまりオランダ語で「弁護士」という意味の名前が付けられました。オリジナルレシピを法的に擁護するという意味あいを人々に印象づける、ユニークなネーミングといえます。
以来、アドヴォカートは、その美しい色合いと濃厚な風味でオランダを中心に徐々に浸透していくのですが、世界的に知られる名酒にまで育てたのは、ドイツのヴェアポーテン社です。

つねに話題になり続けるユニークなキャンペーン

ヴェアポーテン社は、オランダとの国境に程近いドイツのデツェルフカントの町で、1876年に創立されました。オリジナルレシピに忠実に作られたヴェアポーテン・アドヴォカートは、その飛び抜けたおいしさと風味で、瞬く間に世界中に広まっていくのですが、流行を的確に捉え、個性と先進性を重視した経営努力も見逃せません。
たとえば、1999年の春には、ヴェアポーテン・アドヴォカートの代名詞ともなっている“黄色いクラシック”にちなんで、2台の黄色のビートルに社名をペイントし、ドイツの道を走らせるというキャンペーンを行って大きな話題になりました。また、副社長である5代目のウイリアム・ヴェアポーテン氏は、「ヴェアポーテン・イエローにカラーリングされた“シティウィズ”BMWC1の2輪で走り抜ける」というプロモーションで、センセーションを巻き起こしました。
これら一連のキャンペーンは、家族経営のヴェアポーテン社ならではの、手作り感に富んだものです。「今年は何が始まるのか」と、消費者に期待されるキャンペーンであり続けるための努力は、時代を読み、未来を見通すという意味で、会社経営にも大きなプラスとなっています。
現在では、ベルリンやストラウビン、ボンなどのドイツ国内だけではなく、オランダ、イタリア、オーストリア、スイスにも工場を建設し、エッグリキュールのトップメーカーとして世界中に市場を広げています。

ドイツのチョコレートの歴史を塗り替えたアドヴォカート

ヴェアポーテン社の工場には、毎日、クラスAの新鮮な卵が130万個も納入され、厳しい品質検査を受けた後、ベルトコンベアーで自動破卵機へと運ばれます。衛生的な環境の中で人手によらずに割られた卵は、真空装置で殻を取り除かれ、すぐさま卵黄と卵白に自動的に分けらます。この卵黄が、ヴェアポーテン・アドヴォカートの基本的な原材料となるのです。
卵黄の変質を避けるためにじっくりと時間をかけて熱処理し、そこにブランデーを少しずつ加えていきます。ブレンドする副材料はヴェアポーテン社の秘伝で、創立以来、変わらぬ配合を守り続けています。こうして生産されるヴェアポーテン・アドヴォカートは1日に13万本。カートンに詰められ、世界中に出荷されていくのです。
ヴェアポーテン・アドヴォカートは、ドイツのチョコレートの歴史を変えたことでも高く評価されています。古くからドイツでは、チョコレートカップに生の卵黄を入れて包んだお菓子がたいへんに好まれていました。やがて生卵はカスタードクリームへと変わっていくのですが、いずれにしても日持ちがしないため、人々は朝早くお菓子屋さんに並び、すぐに食べてしまわなければならなかったのです。
この問題をみごとにクリアしたのが、ヴェアポーテン・アドヴォカートでした。風味は変わらないうえに、それまでのものとは比較にならないほど日持ちがよくなり、スーパーにも並べられるようになったのです。手に入れるのが難しい幻のチョコレート菓子は、いつでも手軽に楽しめる日常的なお菓子へと変わっていったのです。
そのままソースとしてケーキやフルーツカクテル、アイスクリームにかけるだけでもおいしいのですが、クリームやムース、ババロア、アイスクリーム作りなどに幅広く利用できることも、ヴェアポーテン・アドヴォカートの魅力。卵黄の風味を限りなく引き出したこのリキュールは、世界中のお菓子作りのプロフェッショナルたちの創作意欲を刺激し続けています。

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