Vol.34 ドーバー 和酒シリーズ 25周年
ドーバー酒造 (日本)
創業者の夢「ドーバー和酒」発売25周年
我が国初の和素材を用いた画期的リキュール「ドーバー 和酒」シリーズは、平成23年(2011年)2月をもって、お陰様で発売25周年を迎える事ができました。永年のご愛顧に感謝の気持ちを込めて、この機会に改めて名酒「ドーバー 和酒」の、今日までの歩みをご紹介させて頂きます。
今から約30年前、1980年代は、弊社は和菓子との接点が殆どありませんでした。その理由は言うまでも無く、洋菓子と比べ和菓子ではあまり洋酒を使う機会が無かったからです。製菓用洋酒専門メーカーを自認するドーバーにとって、日本独自の文化と伝統に育まれた、深遠な和菓子の世界と接点を持てないことは、誠に残念な事実でした。そこで、和菓子業界の方々へ向けた、和素材を用いたリキュールの開発を思い立ちました。当時、和素材リキュールの実現は奇抜とも言えるアイデアでした。しかし、その背景には、和菓子業界の方々と対話がしたいという創業者の夢とドーバーの熱い思いがあったのです。
困難な商品開発
リキュール素材の選定は、和の原点とも言える小豆をはじめ、柚子や金柑といった果物、そして生姜や紫蘇、蓬といったものまで広がりました。洋菓子と比べ、よりシンプルに素材本来の味や風味を表現する和菓子の世界へ提案するには、素材そのものを活かす事が何より大切だと考えました。例えば、柚子や金柑などは、搾汁や濃縮をした加工果汁を使うことも出来ます。しかし、素材の持つ香りや美味しさを活かすため、果実の漬け込みから取り組みました。ところが、和素材の持つ微妙な香りや美味しさを、加工原料に頼らず、手仕込みでリキュールに仕上げることは、想像以上に困難な課題でした。開発部門は悪戦苦闘を続け、様々なアイデアが試されました。例えば、あえて果実を挽き割りにして漬け込み、熟成の経過観察を辛抱強く繰り返し、最も適した熟成のタイミングを見極めました。こうすることで、果実そのものが持つ香りや美味しさを引き出すことに成功しました。(この試練は、後のノンアルコール濃縮果汁・エキス「トックブランシュ」の開発に大きく活かされます)。こうした試行錯誤の末、2年もの歳月が過ぎてゆきました。そして遂に、昭和61年(1986年)2月25日、念願のドーバー和酒シリーズは、9種類のラインナップでの発売に至りました。
上生菓子と「ドーバー和酒」
新発売にあたり、日本全国の特約店様へサンプルを持って訪問し、また、各地でドーバー和酒を使った上生菓子講習会を開催しました。和菓子業界の皆様からは、今迄に無い和素材のリキュールは画期的で、驚きの反響を頂きました。しかし、上生菓子(茶会菓子)は白餡を主原料に構成され、繊細な手作業により美しい季節感を引き出す伝統手法が確立されているために、加えることの出来るリキュールの量はおのずから微量となり、ドーバー和酒の使用は寒天等の流し物や錦玉等での使用に限られました。
その一方、洋菓子の業界では、「和」回帰の気運の中、ドーバー和酒への関心が高まってゆきました。その結果、洋菓子に和の要素を取り入れるトレンドとして、ドーバー和酒は洋菓子業界で、徐々にご支持の輪を広げてゆきました。
思いがけぬ嬉しいニュース
やがて、発売から10年を経た平成8年(1996年)、思いがけぬ新たな展開がありました。この年の10月、IBA(国際バーテンダー協会)の総会が25年ぶりに日本で開催され、カクテルの世界大会も同時に開催されました。
この時、その会場の展示ブースに「ドーバー和酒」を出展してみることにしました。すると、バーテンダーや酒類業界の皆様から、予想外の大反響となりました。「今までに無い和素材リキュールは、創作カクテルに画期的な素材だ」「和素材の風味が絶妙にリキュールとして仕上がっている」という声が聞かれ、弊社ブースは連日多くのバーテンダーや酒類業界の方々で黒山の人だかりとなりました。予想外のこの反響は、5年後、大変光栄で嬉しいニュースをもたらします。
平成13年(2001年)10月7日 、世界大会への出場権をかけた第28回全国バーテンダー技能競技大会にて、ドーバー和酒「紫蘇」「葡萄」を使ったバーテンダーのお二人が、『乙女撫子』『ぶどうのしずく』という史上初の和名カクテルで、総合優勝と創作カクテル部門第一位という栄冠を手にされました。
洋菓子材料による創作和菓子との出会い
平成18年(2006年)10月、創作和菓子の菓匠・宮部 聖氏による、洋菓子材料を使った上生菓子(茶会菓子)と朝生菓子(一般的和菓子)の創作レシピパンフレット「和魂洋才」が、ドーバー和酒を接点に完成しました。日本の四季の移ろいが繊細に表現され、和洋菓子材料の風味が見事に融合した創作和菓子の出現に、業界から大きな反響がありました。宮部 聖氏との出会いに感謝致します。
世界に広がる「ドーバー和酒」
空前のスイーツブームの昨今、25年の歳月を経て、ようやくドーバー和酒は、和・洋菓子の垣根を越えて広く定着して参りました。
そして、ドリンク業界より再び嬉しいニュースが届きました。平成22年(2010年)5月23日に開催された第37回全国バーテンダー技能競技大会にて、山田 高史氏(Bar Noble・神奈川 横浜市)が、ドーバー和酒「紫蘇」を使った創作カクテル〈Leon〉により創作カクテル部門の優勝者となり、他部門でも優秀な成績を収め、見事に総合優勝の栄誉に輝きました。
現在、ドーバー和酒は日本国内に留まらず、台湾をはじめ、香港、オーストラリア、シンガポール、スペイン、英国、韓国等、アジア、ヨーロッパの市場で活躍しています。
ジャンルや国境を越え、「ドーバー 和酒」が宣伝に頼らず口コミの紹介により認知されたのは弊社が理念としていることであり、世界の方々の「ドーバー和酒」の根強いご愛顧は光栄です。常にお客様に必要とされるメーカーであることを基本理念に、今後も妥協無き製品造りに邁進して参ります。これからも末永いご愛顧を宜しくお願い申し上げます。