Vol.22 フランボワーズ ソヴァージュ・ウィリアムポア

3-タンネン ブレンネライ社(ドイツ)



キルシュワッサー発祥の地、ドイツ・シュヴァルツヴァルト地方

ドイツの南西に位置するシュヴァルツヴァルト(ブラック フォレスト=英名・黒い森)は、その名の通り、もみの木に覆われた広大な山岳地帯を背に、ドナウ川やライン川に面した果実の生育に最適な澄み切った空気の森林地帯です。
この地では古くからチェリーが栽培されており、キルシュワッサー発祥の地として知られていました。
シュヴァルツヴァルトは季節を追うごとに次々に果実が実り、「ドイツの果実の宝庫」と賞賛されています。ぶどう、洋梨、フランボワーズはもちろん、チェリーの見事さは群を抜いています。円形、ハート型、卵型と形もさまざまで、ピンク、黄色、赤、濃い茶色、輝くブラックと色合いもさまざま。もちろん、味わいもどれひとつとして同じものはありません。この地で300年以上にわたって、名産のチェリーや、他のフルーツを使った蒸留酒が作られてきました。


キルシュの歴史は3-タンネンの歴史

ここで、ドイツ屈指のフルーツブランデーメーカーをご紹介しましょう。3-タンネンーブレンネライ社です。キルシュの製造を代々にわたって行ってきたケニンガー社の伝統を引継ぎ、3−タンネンというブランドを立ち上げて今日に至ります。
それまで、シュヴァルツヴァルトのキルシュメーカーは、大型の木樽にキルシュを詰めて大都市の流通会社に販売するという形式で仕事をしていました。流通会社を通してさまざまなブランド名でボトリングされ、販売されていたのです。
3-タンネン−ブレンネライ社のドイツ気質とその誇りは、納得のいく独自の蒸留所と製造工場の建設に向わせました。1リットルの3-タンネン キルシュを1本造るのに12kgものチェリーを使い、不効率な古式の蒸留器を今でも用いて深い香りを生み出す製法は、伝統として守られています。
「伝統」「英知」「品質」を意味する3本のもみの木をデザインしたロゴマーク、14個の赤い羊毛の玉をのせた帽子をかぶり、シュヴァルツヴァルト地方の民族衣装を着た少女の絵が描かれたボトルなど、歴史と伝統を大切にしている姿勢がうかがい知れます。 限定製造による高品質と深い風味によって、3-タンネン・キルシュは、キルシュワッサーの傑作として世界中に認められてきました。

個性的な2種のウイリアム(洋梨)で気品高い香りと風味を実現

3-タンネン−ブレンネライ社の挑戦は、キルシュだけにとどまりませんでした。洋梨の最高品種であるウイリアム種(バートレット)を使った3-タンネン・ウイリアムポアの誕生にも、キルシュ造りで養われた経験と知識が詰め込まれています。 用いられるのは、果実の宝庫シュヴァルツヴァルトやドイツ南部のチロル地方、ローヌ渓谷などでとれる洋梨です。夏の終わりに近づくと、これらの洋梨の産地では、あたりいちめんに濃厚な香りが漂います。 3-タンネン・ウイリアムポアは気高い風味が持ち味なのですが、それをかもし出すために3−タンネン−ブレンネライ社ではウイリアム種の洋梨を2 種類使っています。強いブーケを放つ黄色いウイリアム、繊細で上品な芳香を持ち味としている赤いウイリアム。この2種類の異なる個性を微妙なバランスで組み合わせることで、3-タンネン・ウイリアムポアは、他の追随を許さない存在になったのです。 ドイツでは、ウイリアムのマッシュに砂糖を加えることは法律で厳しく禁止されていますので、洋梨の品質が仕上がりを大きく左右します。3-タンネン−ブレンネライ社の更なるこだわりとして、濃厚な風味があふれんばかりの、完熟したウイリアムのみを使うことを伝統にしています。 そして発酵は、いっさいの添加物を加えることなく、自然に行われます。発酵が終了すると、すぐに蒸留過程に入ります。銅製の蒸留釜とステンレスの冷却器を使ったドイツ伝統の製法で蒸留が行われますが、この方法では職人の高度な技術と経験が要求されます。 蒸留を繰り返すことでできた、もっとも高品質な蒸留液の中間部(ハート)のみがステンレスタンクに移され、熟成されます。こうして、フルーティーな香味を持つ無色透明でクリスタルのような輝きのフルーツブランデー「ウイリアムポア」が完成します。1リットルのウイリアムポアを造るために、最大15キログラムもの洋梨が必要です。

野生のフランボワーズ ソヴァージュから高貴な果実の風味を引き出す

3-タンネン ブレンネライ社のもう一種の傑作フルーツブランデーをご紹介しましょう。3-タンネン・フランボワーズ ソヴァージュです。
フランボワーズは英語ではラズベリー、日本語では木苺のこと。3-タンネン−ブレンネライ社では、野生のフランボワーズ(フランボワーズ ソヴァージュ)以外はいっさい使用していません。野生ならではの力強さを持っているからこそ、深い味わいと高い香りが味わえるのです。
使用されるフランボワーズ ソヴァージュは、標高800メートルから1000メートルのバヴァリアの森とカルパチア山脈で7月ごろに手摘みにされます。たいへんな労力と手間の後、デリケートな素材であるため収穫後は直ちに加工されます。
チェリーや洋梨は蒸留前に発酵という過程を経るのですが、フランボワーズ ソヴァージュは糖分が非常に少ないため、発酵させると繊細な風味が失われてしまいます。3-タンネン−ブレンネライ社は、こうした難問を解決するために独自の製法を開発しました。フランボワーズをつぶさずに丸ごと純度の高い酒精に漬け込むなど、さまざまな漬け込み工程を考案したのです。
数々の漬け込みの過程を経て、小さな銅製のポットスチルに移され、初めて蒸留されます。キルシュやウイリアムポア同様、ドイツ伝統のポットスチルがあって、初めて成しうる蒸留ともいえます。こうした努力の積み重ねで、高貴な果実の風味を壊すことなく、最大限に魅力を引き出すことに成功したのです。一粒ずつ手で摘んだ野生のフランボワーズ ソヴァージュ約8キログラムからつくることができるのは、わずか1リットルのフランボワーズ ソヴァージュ(ブランデー)だけです。

バーテンダーやパティシエの創作意欲を刺激し続ける

3-タンネンのウイリアムポアとフランボワーズ ソヴァージュは、食後酒としてドイツで人気を誇っています。それぞれ、もっともおいしく味わえる適温があり、フランボワーズ ソヴァージュは8~12度、ウイリアムポアは16度ぐらいです。
それぞれの魅力をもう少し掘り下げてみましょう。まずは、ウイリアムポアから。食後酒としてそのまま冷やして飲む他、トニックやソーダで割ったり、ベルモットと混ぜたり、フレッシュライムジュースと合わせたり、カクテルとしての使い方も多彩です。お菓子作りの分野では、ドイツで伝統的に作られてきたトリュフにプラスすると最高の風味と香りを封じ込めることができます。とくにミルクチョコレートとの相性は抜群です。
もう一方のフランボワーズ ソヴァージュは、クレープ、シャルロット、ババロワ、サヴァラン、スフレ、タルトなど、あらゆる洋菓子やアントルメの仕上げとして用いられています。また、フルーツとも相性がよく、パイナップル、パパイヤ、バナナ、パッションフルーツなどのトロピカルフルーツをはじめ、桃、イチゴ、メロン、などともよく合います。
完熟した果実を贅沢に使い、こだわりと伝統の製法で仕上げた本物の味を心に込めて日本にお届けします。

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