Vol.19 ダンワイン(赤・白)キャサルメンデス(ロゼ)
アリアンサ社(ポルトガル)
800年以上に渡って高品質のワインを造り続ける
日本を訪れた最初の西欧人は、鉄砲伝来で知られるポルトガル人でした。パンやカステラなど、今ではおなじみの食品は勿論、雨の日に着る「カッパ」もポルトガル語です。
また同時に日本の文化もポルトガルに伝わりました。この地を旅した日本人は、ポルトガル料理を食べたとき、「日本料理とどこか通じる味だ」と感じるそうです。日本人の心とおなかの両方を癒してくれる米料理のバリエーションも豊富です。
距離的には遠くても、気持ちの上ではとても近い国…そんなポルトガルの生んだ上質のワイン、それがダンワインです。
ダンワインの産地はポルトガルの中央部。モンデゴ河とダン河沿いのヴィゼウ周辺には、DOC(原産地統制呼称)というのはポルトガルにおけるワインの格付けで、フランスのDOCに相当する最高級ランクを意味します。DOCに指定されているのはダン地区を含めて23地域です。
ポルトガルが建国された12世紀頃から、「ダン地区で産するワインは注目されていた」という記録が残っています。貴族、宗教団、軍隊などが、有名なワインを製造するために、競ってこの土地を獲得したとされています。ダン地区が新規程のDOCに認定されたのは、わずか100年前にすぎませんが、800年以上にわたって、有数のワイン産地であったわけです。
「迷ったらダンワイン」が流行り言葉になった時代
1950~1960年代にかけて、ポルトガルで流行した言葉があります。それは、「迷ったらダン」というもの。レストランでなじみのワインがなかったとしても、ダンを選んでおけば間違いないといった意味が込められています。堅苦しいビンテージ等はなくとも安心して飲めるワインだということです。
このような評価を得た理由はいくつかあります。その一つが、過酷ともいえる土地の条件です。この地では、平坦なぶどう畑は皆無です。起伏の激しいテラス状の畑、風を防ぐために針葉樹林の中に切り開かれた畑といったように、厳しい条件の中でぶどうは栽培されています。そして、冬は寒く、夏は猛暑に見舞われます。しかし、だからこそ、秋になって気温が下がってくるとマストの発酵が除々に進み、糖度が上がっていくのです。
高い評価のもう一つの理由は、フランス・ボルドー地方の醸造者がダン地区に移住し、ワイン技術を伝えたことです。じっくりと熟成させた赤ワインは、ボルドーワインに匹敵する力強さを有しています。ダン地区では、年間約550万ケースのワインが生産されていますが、そのうち80%が赤ワインです。
選び抜かれたぶどうでさらなる高品質に挑戦
ダンワインの著名な製造者として知られるアリアンサ社は、古いワイン産地バイラーダに位置するサンガルホスにあります。大規模な企業でありながら、商業主義、拡大主義をとらず、伝統を守りながらあくまで品質第一主義を貫いています。
しかし、ポルトガルのワインは、ボルドーに勝るとも劣らないほどの高品質でありながら、知名度が低いのが現状です。しかし母国ポルトガルでは、アリアンサ社のダンワインは、国内の主要ホテル、レストラン、ショップなど、どこでも販売されていて抜群の知名度を誇っております。また、海外でも60カ国で愛されていますが、やはり知名度は品質の高さを超えていません。
そこで、アリアンサ社が今力を入れているのは、プレミアムワインの製造であり、1991年からぶどう栽培法を強化しています。バイラーダ以外のワイン産地で畑を購入し、最終的には600ヘクタールを目標としてブドウ栽培を開始しました。
1999年からはフランスの著名な醸造学者でもあるミッシェル・ロラン氏の強力を得て、3種の新世代ダンワインが誕生し、日本にも輸出されています。
幻の「ダン会」に集うはずだったダン姓の人々
日本におけるダンワインを語るとき、幻の「ダン会」の話を外すことはできません。
ある日、駐日ポルトガル大使館よりキャサルメンデスの大量注文を頂き、お届けしたときのことです。駐日大使より、ダンワインを日本で飲めないことを嘆く方がいることをお聞きしました。食通であり、放浪の作家として知られた文豪、檀一雄氏です。檀氏はポルトガルのサンタ・クルスに別荘を所有し、文筆活動を行っていました。そこに居を構えたのは「いつでもダンワインが飲めるから」という、いかにも檀氏らしいもので、とりわけアリアンサ社のダンワインを愛飲していたそうです。
お話を伺った後すぐに檀氏のご自宅を訪問し、アリアンサ社のダンワインを弊社が輸入していることをお伝えしました。檀氏はいたく喜ばれ、盛り上がるお話の中で提案されたのが、日本での「ダン会」の発足でした。檀氏と、檀氏と親交の深い作曲家・日本芸術員会員の團伊玖麿氏のお二人が呼びかけ、弾厚作氏(加山雄三氏の作曲家ペンネーム)、女優の団令子さんをはじめ、日本全国の著名な「ダン」姓の人々を集めて「ダン会」を作ろうという遊び心いっぱいの発案です。アリアンサ・ダンワインの輸入業者である弊社もこの発足に大いに賛同し、発起人壇一雄氏の提案で特別に木樽を輸入し、樽酒で乾杯してみなで飲み明かそうという構想まで練られました。
しかし、その後福岡県の能古島にて壇氏が急逝。この「ダン会」は幻に終わってしまったのです。もし発足していたなら、ダンワインを肴に、すばらしい会話と文化が日本に生まれていたかもしれません。今も食通の随筆家で知られる壇氏のご長男、壇太郎氏や女優の壇ふみさんらによって、ダンワインはご評価を頂いております。
ポルトガル人が愛する天然の弱発泡性ロゼ「キャサルメンデス」
現在、アリアンサ社のワインは、赤、白のダンワイン、そしてキャサルメンデス<ロゼ>の3種類を日本で楽しむことができます。
赤ワインはティンタピニエラ、ハエン、アルフロシェイロなどのぶどうを使用しています。前記のとおり、ボルドーワインに勝るとも劣らないドライで力強い味わいが身上。フルボディで、重厚な味わいが楽しめます。
白ワインはエンクルザード、セルシアルなどのぶどうを使用したフルーティなミディアムボディのワイン。軽やかで華やかな風味が特長です。
ダンワインと並んでアリアンサ社が誇るロゼワインがキャサルメンデスです。ポルトガルはロゼワイン発祥の国でもあり、ロゼの歴史はアリアンサ社の歴史といっても過言はありません。人工ガスではなく、自然発酵から生じる弱発泡性のロゼワインで、色調はオレンジ色に近い自然の淡いピンク色。高貴な香りとぶどう本来のほんのりとした甘みを特長とします。よく冷やして飲むとまさに絶品で、ポルトガル国内では、高級レストランや食堂車等、いたる所でキャサルメンデスがメニューに登場します。まさに、世界中のロゼ愛飲家を魅了するロゼ、それがキャサルメンデスなのです。
高品質でありながらリーズナブルな価格のアリアンサ社のワインは、その高品質で評価され、認知されることこそを、アリアンサ社の最良の喜びとしています。